スペシャルインタビュー 上田 信行 同志社女子大学現代社会学部現代こども学科教授
 

『ファンタジーの文法』に見る、創造性の原点

イタリアの児童文学作家として著名なジャンニ・ロダーリ(1920-1980)。彼の著作に、「ファンタジーの文法-物語創作法入門(窪田富男訳、筑摩書房)」という代表作があります。この本には、ファンタジーを生み出すような、創造性を高めるため不可欠な発想法やコンセプトに関して、非常に興味深い見解が述べられています。
ロダーリは、普段は全く性質の異なる2つの言葉をぶつけ合わせて、新しい意味を生み出すところから新しい物語は生まれると、「ファンタジーの文法」の中で語っています。つまり、ファンタジーのような、創造的なイマジネーションの世界を切りひらく時、そこには既存の言葉や概念のかけ合わせが、不可欠な要素として登場するんです。
僕は、学習環境のデザインやラーニング・デザインに関する研究を通じて、「学び」の持つ楽しさと可能性を追求しているのですが、この研究テーマもまた、ラーニングとデザインをかけ合わせた時に生まれたテーマなんです。
ラーニングとデザイン。一見かけ離れているようですが、学びをデザインするという発想があってもいいのではないかと考えた時、「ラーニング・デザイン」という魅力的なコンセプトが目の前に現れたんです。以来僕は、「学び」のプロセスをより良くデザインすることで、「学び」の可能性を拡げることができるのでは考えています。本来「学び」とは、自らの経験と新しい出来事を結びつけて、新しい世界を創造するプロセスですから。
振り返ってみると、新しいコンセプトや発想が生まれる時、必ず何かをかけ合わせている自分がそこにいるんですね。
  
 

「かけ合わせ」は、創造力を生み出す重要な「作法」の一つ

   現代社会の中で、全く何もないところから、新しい何かを創り出すことは、非常に難しい。でも、何かと何かをかけ合わせて新しいものを創り出すことはできます。あるテーマに対する姿勢や考え方、センス、論理的な心の姿勢、そして知的好奇心があれば、それは十分に可能です。
僕はこれからの「学び」には、「プレイフル・ラーニング」という、何か新しい世界が切りひらけるような、ワクワクした世界観が必要と考えています。このコンセプトもまた、かけ合わせなんです。
例えば、お母さんはしばしば子どもに「遊んでないで勉強しなさい!」といいます。これは、家庭の中では「遊び」と「学び」が対立概念にあるということを端的に示しています。しかしこれをかけ合わせ、「プレイフル・ラーニング」や「ラーニングフル・プレイ」ということばを生み出してみると、「わくわく、ドキドキする学び」「学びに満ちあふれた遊び」という「学び」の本質的な側面が顕在化してくるわけです。
何かをかけ合わせて、「おっ、面白いな」って思ったら、まずは自分なりの解釈をして自分の言葉に置き換えてみる。そして自分の言葉として使っていく。するとそれは、自分のものになっていきます。こうして、創造的なこころの姿勢(mindset)が磨かれていくのではないでしょうか。つまり、何かモノや言葉、概念をかけ合わせることは、創造力を生み出す重要な「作法」の一つなのだと、最近は強く感じています。
 
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