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「豊かさ」や「最高のもの」っていうのは、それ単体ではなく、必ずかけ合わせによって生まれますよね。たとえば画家の人に「どの色が一番綺麗ですか?」と質問すると画家の人は「綺麗な色は無い」と答えるそうです。なぜかというと綺麗な色というのは、色の組み合わせやうまいかけ合わせの中でお互いの色が際立って生まれる色だから。ところが、現代の人は価値観がシンプルで一本調子になっていると思いますね。 今ちょうど就職活動についての本を書いているのですが、その過程で取材をするとみんなこう言うんですよ。「大学を卒業してゴールデンチケットを使って大企業の正社員になる」。フリーターや非正規の契約社員に比べて生涯賃金が倍になるからだそうです。でも果たして生涯賃金が多いというだけでその人の幸福が計れるのかなぁ? 「生涯賃金の計算ができれば幸せになれる」という決めつけがあるような気がします。 私は、自分の中にある価値と、全く違う別の価値観とをかけ合わせられる社会になればいいなと思っています。自分の人生についてゆっくり考えられる豊かさというのは、生涯賃金では計れませんが大切なことだと思うんですよ。いろんな価値観がうまく組み合わされることが、今の社会には必要なのではないでしょうか。生きることってそんなに単純じゃないから、無駄なことをするのも良いし、自分なりの気持ちのいいかけ合わせや「コレがハマってるよな」と思う正しいかけ合わせが現代を生きる人にとって大切なんだと思いますね。そしてそのかけ合わせによって生まれてくる多くの価値観が、また互いに影響をし合って、さらに豊かなものになっていくのが一番ですよね。 |
| かけ合わせは僕が小説を書くときにも重要です。何かうまいかけ合わせができると「ヤッタ!」って思います。30〜50ページの短編だったらよいかけ合わせが1つ見つかれば後はちゃんと書けるものなんです。短い作文や、俳句は特にそうですね。5・7・5の17文字だといい取り合わせが2つ見つかれば、その俳句は完成したも同然。たとえば「初時雨 猿も小蓑を 欲しげなり」という芭蕉の句。「時雨」と「猿」をかけ合わせた時点で既に良い句になってます。「しずかさや 岩に染み入る 蝉の声」もそう。「岩」と「蝉」の具体的な言葉だけで日本人の心をグッと掴んでいます。うまいかけ合わせというのは人の心も動かすんですよ。 モノを作っている人であればわかると思うのですが、「コレとコレを組み合わせれば盛り上がるなぁ」という組み合わせは無数にあります。私の書いた「4 TEEN」という作品の中には、実は「少年」「夏」「自転車」という3つのかけ合わせがあります。この具体的な3つのイメージが決まれば基本色が決まったのと同じ。誰だって良い話がスラスラ書けますよ(笑)。ただ、3つのかけ合わせには時に高等テクニックが必要な場合もあります。たとえばファッションではメインカラーがあって差し色でアクセントを付けますよね。これにもう一色追加して全ての色を見せるのは難しいものです。 こんな風に、実はかけ合わせというのはどんな所にもあって、創造力を生み出す源泉として深く関わっています。シャーボXはただ3色のボールペンではなく、基本設定がシャープペンシルとボールペンだというところがポイントですね。シャープペンシルの芯のブラックはボールペンのカラーと重ならないので、使い勝手のよい組み合わせがしやすいのだと思います。 | ![]() |